うそつきカメレオン
駅の柱、鏡面に移る自分の姿は、はっきりとサラリーマンしていた。3年前の僕がみたらどう思うだろうか。人混みが嫌いだった。だから満員電車はなるべく避けて生きていた。それでも今このとき、サラリーマンであることを全うしようとしているのは、諦めていないということだろう。おれをバカにした、なめ腐った全ての人々をあっといわせたい。復讐したいとは思わなくなった。一つ大人になった証拠だろう。でも前以上になんとかしてやりたい、どうにかしてやりたい。そういう気持ちが強くなった。とにかく生き抜くことに全力になった。満員電車には人を押し退けてでも入り込むようになった。サービス業の人たち相手に強気になった。かっこわるい人間になった。かっこわるくてもいいから自分のために生きたい。生きて生き抜いて何かを手に入れたいと思うようになった。嘘です。本当なんてどこにもないんです。
ださいだろ。かっこわるいだろうこれがおれさ。目を逸らしちゃいけません。
帰り道、同じような格好をしたサラリーマンとすれ違った。思いっきり肩をぶつけられそうになった。避けた。でも少しぶつかった。刃はその切っ先だけでも誰かを傷つけうる。鋭利な心。全身刃物人間。誰かから見た僕もきっとそんなもんなんだろうな。過剰な自意識は自分を守る盾でもあり、誰かを傷つける刃にもなる。
頭がパンクしそう。考えることを避けるようになったツケだろうか。今日もお疲れさま自分。