生き延ばして、秋

元バンドマン。情熱を失ってとりあえず正社員としてIT事務の形だけ正社員。うだつのあがらない毎日。何かがほしい。ほしくてたまらない。

孤独は好きじゃない

大好きなライブハウスがあった。繁華街の隅の隅のほうにぽつんと、でもしっかりとした存在感をもってそれは存在していた。上京したてで二週間後、二回目のライブがそこだった。対バンには今ではメジャーデビューしているバンドもいた。ボーカルの旧友だそうな。弾く、何もわからずに、不安と期待と怒りと、入り交じり、弾く。鳴る。箱と僕が共鳴する。天井が低く、汚らしい箱だった。低い天井を駆けるように音が巡っていく。狭いから、自分の元まで返ってくる。稲妻のように、体がふるえるような情動。地元が大嫌いだった、東京も怖かった、不安でしかたがなかった。でも、よかったと、確かに、思った。お前等みんなぶっ殺してやるからな、ってライブしてた。でもみんな最高に愛してるからなとも思ってた。とにかく強い感情がそこにはあった。なんとかしてやりたいどうにかしてやるどうとでもなれって思ってた。若いというのは年齢だけではなく、そういう気持ちのことなのだと今では思う。そしてそのエネルギーは全てを凌駕しうる原動力なんだろう。失って学ぶことがたくさんある。ブッキングは僕と同じ出身の赤い髪の女の子だった。かわいい笑顔をする愛嬌のある子。暗い暗いライブハウスで、一筋の光を見つけたような気がしていた。その光を今でもずっと探しているのかもしれない。

 

ならしたいと思えれば。思えれば、年齢なんて関係なく、今でもかき鳴らしていただろうに。すっかり大人になってしまった、失ってしまって、無難で無気力な道ばかり選ぶようになったしまった。それもありかもしれない。世間的には尊敬できないまでも、全うといえる人生を進んでいる気もする。でも僕はもう終わってしまっている。こんな後悔は絶対にしたくないから全力でやった。とにかく全力だった。端から見たらしらん。でも僕の中では出し尽くした。それでも後悔してしまう。人間。所詮人間だった。

 

嫌われるのが怖いままじゃ何もできやしない。嫌われてもいいから何かしたい。どうにかしてしまいたい。